サンクトペテルブルグ大学での留学中、冬休みになったのを機に裁判の傍聴を始めました。
自宅と法学部のちょうど真ん中あたりに、ワシレオーストロフスキー地区裁判所がありました。地区裁判所というのは、民事事件・行政事件を管轄する通常裁判所で、日本の地方裁判所にあたるものです。
但し、全く同じわけではなく、日本では離婚・相続などの家事事件は家庭裁判所で審理されますが、ロシアではそれらは通常裁判所で審理されます。
最初、法廷傍聴に行った時、おそらく外国人が傍聴に来ることなど一度もなかったためかすこし警戒され、警備(大体かなり大柄でクマのような体格で制服着用)が私を通していいかどうかをすこし議論しはじめたので、「ペテルブルグ大学の学生で日本の弁護士だ。ロシア連邦民事訴訟法の研究をしているんだ」と説明すると、すこし階級の高そうな警備が「外国人も傍聴できるはずだ」といい、「でも今は昼休みだからもうちょっと後できたほうがいい」と教えてくれました。ロシアの昼休みは1時から2時のようです。
その後、建物の入り口で金属探知機を通り抜け、カバンを開披して兇器などを携帯していないかを調べられます。次に、受付の警備に提示すると「どこに行くんだ?」と聞かれます。一応、入り口に開廷表がありますので、「⚪️号の裁判期日を見るんだ」というとようやく建物に入れます。
この裁判所は一番近かったので、最も多くの事件を傍聴しました。
いろいろ法廷を傍聴していたのですが、60歳ぐらいの少し怖そうな女性裁判官が、「君はペテルブルグ大で何を勉強しているの?」とか「日本の弁護士なのか!」と興味を持ってくれ、事件の感想を聞かれたり、民事における検察官の役割を教えてくれるなど親切だったのでもっぱらその裁判官の法廷を傍聴していました。
これから、傍聴した事件の内容や商事裁判所、連邦最高裁、憲法裁判所の法廷傍聴について書いていきます。